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深い森の奥には
何かが宿る
星々さえも
静かに見守る
夜の彼方
妖精と光る草花たちが
語り合う秘密
儀式の夜の
月明かりに
揺れる物語
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深い森の奥深く、静かな光が揺らめいていた。まるで星々が地に降り、草花たちとささやき合うように。
ある闇夜、小さな冒険者ルイは、その光をひと目にしてしまった。黒雲が月を隠す中、ふわりと浮かぶ淡い影があった。
恐る恐る近づくと、十数センチほどの小さい妖精が座っていた。彼女の肌は新芽のように柔らかく、髪には虹色の羽根がそっと飾られかすかな光粒を纏っている。
しかし、その瞳は空を見ているのではなかった。もっと遠く、遥かな世界を見つめていた。
「きみは……?」
思わず漏れた声に、少女がふっと振り返った。
「あぁ、見えちゃったのね。でも大丈夫よ。わたしエメラ。」
微笑み、エメラと名乗った彼女は、「生命の光を紡ぐ妖精よ」と語った。
「今夜は特別な儀式。月の力を集めて、新しい種を蒔くの」
ルイは目を輝かせた。
「ぼくも手伝っていい?」
エメラは驚きながらも微笑み、「うん。じゃあ、ちょっとだけ魔法をかけるね」
指先を動かした。瞬間、ルイの体が光に包まれ、小さくなり、背中に透明な羽が生えた。
「わあっ、飛べる!」
ルイが感動していると、エメラが手を差し伸べた。
「さあ、一緒に行きましょう」
二人は夜の森を舞い、月光を集めて種を蒔いた。光の粒が花々に降り注ぐたび、森は淡く輝き、新たな命が芽吹く。
夜風に乗って飛び回り、やがて夜明けが近づくころ、エメラはルイに小さな種を手渡した。
「今夜はありがとう。これ、大切に育ててね。私たちの友情の証だから」
数年後、その種は巨大な木となり、町中に幻想的な花を咲かせた。人々はそれを「月の樹」と呼び、その美しさを愛し続けた。
そして今も、ルイの心の中には、あの月夜の森で出会った、小さな妖精エメラの笑顔が輝いている。
Mystique in Shadowは、オリジナル作品コレクションの一つで、「幻想の闇の中のMystique(神秘的)な創造物たち」をイメージしています。
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