月光裂く塔の影
漆黒の髪が風に揺れる
青白き肌に宿る千年の孤独
誘惑と哀しみの狭間で
時は静かに流れていく
純粋なる愛が
織り返す運命を変える
血色の夜に咲く花よ
二人の永遠が始まる
ある夜の街で、月明かりに照らされた歪んだ塔の影から、ひとりの女が現れる。
青白く輝く肌は白い大理石のごとく冷たく、長い黒髪は乱れながらも妖艶に揺れる。
その瞳は魂の奥底を暴き、微笑む口元には甘美な誘惑と微かな哀しみが宿っていた。
その美しさは、人を魅了し、同時に恐怖を感じさせた。
彼女のそばにいると、血を吸われても構わないとすら思わされるほどの魔力があった。
彼女は夜に生きる、美しくそして恐ろしい存在、バンパイアだった.
彼女が血を吸い、命を奪った者は数知れず。
それは生きるための儀式であり、数百年の孤独を埋めるための贖罪でもあった。
彼女を求め近づいてきたのは、その美貌や不老不死を求める欲望に囚われた浅き魂ばかり。
どれほど血を啜ろうとも、彼女の虚無は満たされることはなかった。
ある夜、ひとりの青年が現れる。
彼は彼女の美しさに溺れず、その内なる孤独と哀しみを見つめた。
彼女に会いに塔を訪ねるたび、彼の瞳にはただ静かな想いが灯る。
彼女は戸惑い、そして気づく。
初めてその純粋な存在に心を揺さぶられる自分に。
彼は彼女の正体を知りながら、恐れることなく側にいることを選んだ。
牙が頸筋に触れた瞬間、青年は、痛みではなく、至福の感覚に包まれる。
彼女は初めて奪うのではなく、愛をもって血を分けた。
そして彼を不老不死へと導いた。
青年は安堵の表情を浮かべる。
これで二人は永遠に寄り添うことができると。
それから二人の姿は夜霧と共に消えた。
彼らの愛の伝説は風に溶け、時の流れを超えて語り継がれていった。