絵画詩
静寂の森に咲く花の夢
朝露に濡れた髪に秘めたる言の葉
目を閉じれば消えてゆく
名を呼べば風に溶ける
あなたの瞳に映るものは
昨日の記憶か明日の幻か
遥かなる森の深奥、月と霧の狭間に佇む「夢見の花苑(ゆめみのかえん)」には、一人の妖精が住まう。
名を ルシア という。彼女は花の妖精の一族に生まれた。
彼らは花々の夢を織り、世界に香りと色彩を授ける役目を持つ。
その姿は人のようでありながら、決して完全に人ではない。
肌には花の紋が浮かび、髪には夜露を湛えた花々が咲き続ける。
年齢を数えることに意味はなく、彼らは花の開く時に生まれ、散る時にその姿を消す。
ルシアは静かに、夢と現実の狭間で囁くように生きている。
しかし、一度彼女の瞳を見つめた者は、二度と同じ夢を見られないと言われている。
なぜなら彼女は、夜の終わりとともに消える幻そのものだから。