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古より続く王国の庭園で
一人の王女が静かに佇む
エルフの血を秘めながら
彼女は人間たちの中に溶け込み
ただの一輪の花として生きる
だが誰も知らない――
その微笑みの奥に秘めた真実を
旅の画家よ あなたの筆が描くのは
ひとつの星が再び輝き出す瞬間
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リリアナは、かつて栄華を誇った魔導大国「エルフィリア」の王女であり、ハーフエルフとして生まれながらも最強の魔力を宿しているが、慎ましく、穏やかな日々を過ごしていた。
ある日、リリアナは宮廷の庭で一人の旅の画家と出会う。彼の名はエヴァン――若くして各地を旅しながら絵筆を振るう画家で、いつも頭には風変わりな三つ角帽を被っていた。その帽子は色鮮やかな赤と青の縞模様で、少々大きめだったため、風が吹くたびにふわりと浮き上がりそうになるのが特徴だった。
リリアナが庭園を散策していると、突然、風に乗ってエヴァンの帽子が舞い上がり、そのまま彼女の足元へと落ちてきた。リリアナは微笑みながら帽子を拾い上げ、振り返ってエヴァンを見つめた。
「これはあなたのものでしょうか?」
エヴァンは慌てて駆け寄り、少し照れくさそうに笑った。
「ああ、そうです!コイツ、すぐふらっとどっか行っちゃうんです。
ボクに似たのかな、アハハ」
彼の気さくな態度にリリアナは思わずくすりと笑う。そんな彼の自然な振る舞いが、リリアナにとって新鮮だった。彼女はしばらく話をするうち、興味を持ち、画家に声をかけた。
「よかったら、私の肖像画を描いてみませんか?」
リリアナは、簡素なドレス姿のまま何気なく提案した。エヴァンは驚きながらも、彼女を普通の貴族の女性だと勘違いし、申し出を受け入れた。リリアナは彼を城に招き、そこで初めて肖像画を描いてもらうことにした。
城に到着したエヴァンは、その荘厳な建築美に目を見張り、さらに光に包まれたリリアナの真の姿に圧倒された。彼女は深紅のドレスを纏い、胸元には黄金の魔法のペンダントを身に着けていた。その輝きはまるで、彼女の内なる魔力が静かに脈打っているかのようだった。
リリアナはエヴァンの前に立ち、柔らかく微笑んだ。若いながらも、その佇まいには王女としての堂々とした威厳があり、同時に優雅な美しさが漂っている。エヴァンは一瞬言葉を失い、彼女の存在感に圧倒されながらも、心の中で深い感銘を受けた。
「これでよろしいですか?」
リリアナが静かに尋ねた。
「……はい。とても、素晴らしいです」
エヴァンはようやく声を取り戻し、筆を構えた。
「ぜひ、あなたのお姿をありのままに描かせてください」
数日をかけて、エヴァンはリリアナの肖像画を完成させた。リリアナはその過程を楽しみ、画家との対話を心地よく感じていた。彼の筆遣いは飾らず、ありのままの自分を映し出しているように思えた。
完成した肖像画を見て、リリアナは満足げに微笑んだ。エヴァンのシンプルなタッチと、そこに込められた誠実さが、彼女にとってかけがえのないものとなった。二人は、立場や力の違いを超えて心を通わせ、互いを理解し合う特別な関係を築いていった。
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深紅のドレス 黄金のペンダント
その姿は今 一枚のキャンバスに宿る
画家の筆は飾らず
ありのままの彼女を映し出した
異なる世界に生きながら
彼らは一つの絆を見つけた
風変わりな帽子が舞うとき
彼は新たな旅へと出るだろう
しかし 彼の心には永遠に
あの庭園と王女の笑顔が刻まれ続ける
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