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Mystique in Bloom #175: 涙の精霊リリス / The Tear Spirit, Lilis

***

まずは詩を一首

青き瞳に映るは

花の香り 風の音

その手は優しく

すべてを癒し 守る力

負のエネルギー集う時

彼女は涙を流す

黒き涙が地に落ち

命の輝きを取り戻す

自然の声 心の痛み

すべてを背負い浄化する。

その名はリリス

花畑に咲く精霊

***

昔々、ある広大な花畑の中心に、花の精霊リリスが佇んでいました。

彼女の青い瞳は、優しさと愛に満ち、風にそよぐ花々を優しく見つめていました。

花こそが彼女のエネルギーの根源で、リリスは、花々や自然のすべてを深く愛し、特別な力を持っていました。

彼女は手をかざすだけで、植物や動物、人間までもが抱える病や呪い、死の予兆といった負のエネルギーを自分の体に吸収し、体内で浄化することができたのです。

しかし、その力には大きな代償が伴いました。

リリスが負のエネルギーを体内に取り込むと、彼女自身の生命エネルギーが黒や茶色の涙となり、青い瞳から流れ出るのです。

それでもリリスは、涙を流すことよりも、人々や自然を癒すことを選びました。

彼女にとって、周りの命が輝きを取り戻すことが何よりも大切だったからです。

ある日、リリスは花畑の端で、一本のしおれた木を見つけました。

その木は病気にかかり、葉は枯れ落ち、まるで命の灯が消えかけているようでした。

リリスはそっと手をかざし、木の苦しみを体内に吸収しました。

その瞬間、彼女の瞳から茶色の涙が一筋、ゆっくりと頬を伝って落ちました。

しかし、しおれていた木はみるみるうちに元気を取り戻し、緑豊かな葉を再びつけ、風に揺れるようになりました。

リリスは静かに微笑みました。

「これで大丈夫。もう苦しむことはないわ。」

それから数ヶ月が経ち、リリスが住む森の近くの村から、悲しげな声が風に乗って聞こえてきました。

リリスは村の様子が気になり、森を抜けて村へと向かいました。

村人たちは疲れ切った表情で畑を耕し、子どもたちはお腹をすかして泣いていました。

リリスが村人に話を聞くと、村はかつて平和で豊かでしたが、最近になって領主が突然重い年貢を課すようになり、村人たちは苦しんでいました。

領主は以前は優しく公正な人物でしたが、ある時を境に豹変し、冷酷で貪欲な人物になってしまったというのです。

まるで、何かに取り憑かれたかのように。

「このままでは村が滅んでしまう……」

リリスは心を痛め、領主の城へと向かうことを決意しました。

城に到着したリリスは、領主の部屋へと通されました。

しかし、そこには以前の面影をほとんど残さない領主がいました。

彼の目は虚ろで、顔には暗い影が漂っていました。

リリスはそっと手をかざし、領主に取りついた悪霊の存在を感じ取りました。

その悪霊は、領主の心の弱さに乗じ、彼を操っていたのです。

「この苦しみを、私が受け止めます……」

リリスは深く息を吸い、悪霊が放つ負のエネルギーを自分の体に吸収し始めました。

その瞬間、彼女の青い瞳から真っ黒な涙が溢れ出ました。

涙は頬を伝い、床に落ちると消えていきました。

悪霊の力は強く、リリスの体に重くのしかかります。

しかし、彼女はじっと耐え、浄化を続けました。

やがて、領主の体から暗い影が抜け、彼はゆっくりと目を開けました。

彼の目には、以前の優しさが戻っていました。

「私は……何をしていたのだ……」

領主は自分の行いに愕然とし、村人たちへの謝罪と償いを誓いました。

リリスは静かに微笑み、城を後にしました。

彼女の頬にはその後も長く黒い涙の跡が残っていましたが、村に平和が戻ることを思うと、心は安らぎで満たされました。

村人たちは領主の変化に驚き、喜びました。

年貢は軽減され、村は再び笑顔と活気を取り戻しました。

リリスの存在は村人たちの間で語り継がれ、そして希望の象徴として慕われるようになりました。

それからも、リリスは静かに森と村を見守り続けました。

彼女の愛と献身は、決して消えることなく、すべての命を守り続けたのです。

***

この作品は”Mystique in Bloom”というオリジナルコレクションの作品の一つで、

「幻想的な世界観の中にある花々とMystique(神秘)」をイメージしています。

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