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【闇の城と暁の姫】
漆黒の城が、紫に染まる空を背にそびえ立つ。
その不気味な美しさは、滅びゆく世界の最後の輝きのようだった。
最上階の広間に、一人の姫が静かに佇んでいる。
【リーヴァ——妖精と魔族の血を引く姫。】
ダスティピンクの髪が微かに揺れ、ダークブルーの瞳が虚空を彷徨う。
白い肌を引き立てる花の髪飾りと大輪の帽子。
その優美な姿とは裏腹に、瞳には翳りがあった。
窓の外、王国は衰退の色を濃くする。
兵士は疲れ、農地は荒れ、民の嘆きが夜風に溶けていく。
すべては——父王の選択の結果だった。
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【遠き日の記憶】
リーヴァの母は妖精族の高貴な姫であり、父王を慈愛に満ちた統治者へと変えた。
かつては温和で公正な王だった父。
だが、母の死が彼の心を変えた。
魔族の血に眠っていた覇道への執着が、再び目を覚ましたのだ。
「このままでは……国が滅びる」
リーヴァは静かに呟いた。
彼女は母の遺したラベンダー色のドレスを手に取る。
オフショルダーの布地に繊細なレース——妖魔の名匠が縫い上げた逸品。
鏡の前に立つ。そこに映るのは、かつての母の姿。
「この姿を見れば……父は母を思い出すかもしれない」
わずかに灯る希望。しかし、それは危険な賭けでもあった。
もし父が変わらぬなら——
彼女は己が王となるしかない。
それは、父への反逆を意味していた。
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【対峙】
翌日、謁見の間。
「父上、お話したいことがあります」
父王は一瞬ためらい、低く言う。
「話せ」
リーヴァは息を整え、静かに告げた。
「今、国は疲弊しています。このままでは滅びます。
どうか、戦を終わらせてください」
父王の表情が険しくなる。
「魔族は力によってのみ栄える。弱き者に未来はない」
「けれど、力だけでは守れないものもあります」
リーヴァの声が震えた。
「父上……母がいた頃、あなたはどんなに穏やかだったでしょう。
私は、あの頃のあなたを取り戻したい」
父王の瞳に、一瞬の揺らぎが走る。
だが、すぐに冷徹な光に変わる。
「甘い理想だ。退け」
リーヴァは唇を噛み、最後の訴えを口にする。
「もしあなたが変わらぬなら——
私が、この国を救います」
父王の表情が変わった。
「お前が……私に刃向かうというのか?」
「避けられるなら、それが私の願いです」
沈黙。
やがて、父王は低く唸った。
「……出て行け」
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【決意と対決】
数日後、リーヴァは密かに動き始めた。
忠誠を誓う者たちを集め、国を変える準備を進める。
しかし——
父王もまた、娘の動きを見逃してはいなかった。
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【運命の夜】
ある夜、城の裏庭。
月光が二人を照らし、影を長く伸ばす。
「なぜそこまでして、私に逆らう?」
父王の問いに、リーヴァは迷いなく答える。
「私はただ、母のように……誰かを救いたいだけです」
父王の拳が震える。
彼は目を閉じ、何かを堪えるように沈黙した。
——長い間、忘れていた感情。
そして、ゆっくりと目を開く。
「……お前の母は、常に犠牲を厭わなかった。
私はそれが彼女の命を奪ったと思っていた。
しかし、私のやり方こそが間違っていたのかもしれぬ」
リーヴァの瞳に涙が浮かぶ。
父王は、静かに歩み寄る。
そして、そっと娘の肩に手を置いた。
「成長したな、リーヴァ。
お前は姿だけでなく、芯の強さも母親そっくりだ」
父王の瞳に、わずかな微笑が宿る。
「戦を止める方法を考えよう。
ただし、お前の協力が必要だ」
リーヴァは頷く。
長い闇の時代が終わり、新たな朝が訪れようとしていた。
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【黎明】
その後、リーヴァと父王は共に国を再建した。
黄昏色の空の下——
彼女の笑顔は、咲き誇る花のように輝いていた。
──夜明けは、すぐそこに。
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